水帝は光の粒のようになり、キラキラと天に昇って行く
総帝はいつまでもその光景を見続けた。
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麥皚淇醫生 その日、ギルド“月の光”本部に、総帝宛の手紙が届いた。
隊員から手渡された真っ白な長方形の封筒――
開封しようとして気が付く。
(……魔法がこめられています)
このまま開封してしまうと魔法が発動する可能性がある。
総帝は魔法を解析した。
どうやら、封筒の裏に魔法陣が描かれているようだ。
魔法陣を調べてゆく。
(これはっ……)
総帝は目を見開く。
それは、半径1km程が焼け野原になるほどの威力がある、火属性魔法であった。
封筒を開封すると発動するように仕掛けられている。
総帝の背に冷たい汗が伝った。
これに気が付かなければ、辺り一面を焼け野原にしていたところだったのだ。
しかし、よく考えるとなぜこのような魔法がかけられているのかわからない。
総帝に宛てられた手紙なのだ。
総帝程の人物であれば、開封する前に簡単に魔法に気が付くと予想ができるはすだ。
総帝は思考を巡らせながら、魔力を巡らせて魔法陣を分解した。
魔法が発動できないぐらいまで分解したところで、封を開ける。
手紙を取り出し、二ツ折にされたそれを開けると、目に飛び込んできたのは見慣れた文字ではなかった。
(――っ魔界文字!?)
そう、それは魔界文字と呼ばれる、魔界で使用されている文字。
魔界の言語は、こちらの中央の国で使われているオルス語とほぼ同じなのだが、文字は全く違う。
総帝は、専門家が二時間かけて解読するそれを、読書という趣味に感謝――以前、魔界の文字についての本を読んだことがある――しながら、僅か五秒にも満たない時間で速読した。
三回程読み直し、内容を頭の中でまとめる。
書かれていた内容は以下のことだ。
・今日から丁度二ヶ月後、人間界に攻め入る。
・魔界軍は魔人が100万から200万、魔物が凡そ1000万。
・我が魔界が主・魔王は、魔界城の一番上の階で待っている。
・追伸『手紙に仕掛けた魔法はどうだったぁ~?』
…………追伸はともかくとして、一番上に書かれていた内容は、四天王・ラフィアが話していた内容と同じであった。
情報が中々手に入らず、敵からの手紙であるため内容は全て信じて良いとは思えないが、この手紙はありがたい。
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