「起きたのか?」「ん?ああ、オハヨ」隣のハルが呆れたようにそう言ってくる。とはいえ、そう言うハルも流石に集中が切れ始めているらしい。俺で最後、そろそろ終わるわけだから、それも影響胃鏡收費ているのだろう。教室に帰って来たエートに、そ知らぬ声で「オカエリ」と言う。エートが行くときは「寝てた」ので、エートは少し悪戯っぽく、「起きたんですね」とそれだけ言った。視線には気付かれたが、アレが俺だとまで気付かれる程油断はしてない。今頃エートの脳内は疑問やら警戒心やらでいっぱいかもしれなかったが、おくびにも出さない。俺はそれにも機嫌をよくして、席を立った。「よーやくか。行ってくる」エートとハル、ツァイだけじゃなく、クラス全員の「やっと最後の奴か」という視線も受けて教室を出る。このクラスはすぐ隣に階段があるので、時間も掛からず2階に着いた。測定室Bは教室の半分程度の大きさで、位置としては隣のAクラスの上辺りにある。迷うことなく着いた俺は、ちゃんとノックをして扉を開けた。「来たか。最後だよな?」「ハイ、そうです」普段は滅多に使わない敬語だが、とりあえず使っておく。敬意が籠もってるかは別として、仮にも教師と生徒、その方が自然だろう。「やり方はわかるよな?さっさとやってくれ。流石に飽きた」40とか50とか見てたらそりゃ飽きもするだろう。プリントの件もそうだが、わざわざ言うところが正直者で面白い。とりあえず白い帯の端を持った俺は、まずは俺に魔力があるかを試してみることにした。そう、呼び名が違うだけで、俺のチカラが「魔力」である可能性も皆無じゃない。体からチカラを引き出して、帯に触れさせてみる。少し、間。帯に変化はない。ヨミが、訝しげな顔になった。「カレナ?」「あ、スミマセン。もうやって良かったんですか?」何か合図があるのかと思った――――そう、考えていたと誤解してもらえるよう、とぼけて返す。やっぱり、俺のチカラは魔力ではなく、俺には魔力はないらしい。魔法、面白そうだと思ったんだが。「あー、いいから、始めてくれ」「はい」それでは次の選択肢は2つ。俺のチカラで帯の色を変えるか、幻覚でヨミを騙すか。どちらが楽かは、言うまでもない。俺は帯から手を離し、パチンと、軽く指を鳴らした。