「私は先に教室に入って行く。君は私が合図したら入って来てくれ」
「はい」
頷いて返事を返す。
イヴが教室に入って行き、広い廊下で一人になると、自分が緊張し 東京買樓 いる事に気が付いた。
戦闘前の極限まで張りつめた引き締まるような緊張感とは違い、今までに体感したのことのない地に足がついていないかのような不安がある緊張感。
自分が今まで感じたことのない奇妙な感覚に戸惑いを覚えたが、イヴがこちらを見たことに気がつき、気を取り直す。この妙な感覚について考えていても意味がない。ドアを開け教室に入った。
教室も全体的に白かった。クラスの人数の割に広く、そして廊下から見た広さと矛盾が生じている。それに壁や天井から魔力を感じる。おそらくは空間属性魔法によって、空間を拡張してあるのだろう。
サキカが教室に入ると少しざわめいていた教室が、一瞬沈黙に包まれ、直ぐに歓声が上がる。一部の男子からは刺さるような視線。
居心地が悪くてしかたがない。拭い切れなかった不安が込み上げてくる。──またあの頃のようになったらどうしようかという不安が。
しかし、イヴの隣に立ち前を向くと、どこか心配げな表情でこちらを見る鮮やかな紅い髪の少年──ガイアの紅の瞳と目が合い、不思議なことに安心感が湧いた。
長年同じ時を過ごした親友である彼。兄のような存在でもある彼は、サキカが一番頼ることのできる相手だ。
──心配はいらない。ただサキカは過去の記憶に囚われているだけなのだ。
サキカはゆっくりと笑みを浮かべた。作り笑顔は得意である。
.