" 依頼―― それは高等部一年"
依頼――
それは高等部一年生の皆が楽しみにしていたものである。……一部の者を抜いて。
「さて、行くぞ」
テストの翌日、いつもより幾分かラフな装いのイヴが1-Sの生 日本買樓 に声をかけると、生徒達は歓声を上げた。
しかし嬉しそうでも楽しそうでもない二人がいる。
勿論それはサキカとガイアであった。
二人は憂鬱気に溜息をついた。周りに聞きこえれば何事かと聞かれるだろうが、テンションが上がっている皆がそれを聞き取れるかと言えば、否だ。
二人が憂鬱そうな理由は「面倒だから」というその一言に尽きる。
まず、もし依頼を受けるためにこれから行く予定のギルドが“月の光”だった場合、二人の顔見知りの隊員と会ったら、その隊員が二人の正体を口にしてしまうかもしれない。
そうなったら学園にいることすらできなくなるだろう。
二つ目、何か問題が発生してしまった時、場合によってはその日中に総帝のサキカと炎帝のガイアが赴かなくてはならない。
学園で生活している普段であれば、昼休みや夜に抜け出せばよいが依頼中はそうはいかない。
そのようになった場合は、一緒に組んで依頼を遂行していた者に無理矢理でも何か理由を付けて抜け出す羽目になる。
席を立ちイヴの後をついて行く生徒に少し遅れをとりながら、二人は重い腰を上げた。
「先生っ!どこのギルドに行くんですか?」
一人の女子生徒が問う。
ガイアとサキカは予想がついているその答えとは違う答えが返ってくることを願ったが、そう思い通りになるわけがない。
「“月の光”だ」
聞きたくなかった答えが耳に入り、余計に気力が萎えてしまう。
生徒達が歓声を上げて喜ぶ中、二人は再び溜息を吐いたのだった。
一行が向かった先は四階の東の端にある一見極普通の教室である。
三階の東の端にある1-Sの教室からはそこまで遠い教室ではない。
教室に入り、最後に入った生徒がドアを閉めると、不意にイヴが壁に手をついて魔力を流しはじめた。
それと共に床に複雑な文様が浮き出て来る。
転移の魔法陣だ。
魔法陣の指定している座標を見るとどうやら“月の光”本部の目の前のようだ。
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