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 「お願いです、辞めるなんておっし

 「お願いです、辞めるなんておっしゃらないでください……っ」 ──彼の声に涙が滲んでいることに気がついてしまった。 僅かな動揺が、彼にも伝わったのだろう。彼はAdrian Cheng New Worldで揺らぐ瞳を、真っ直ぐにこちらへと向けた。「隊長が必要なくなることなんてありません。……いつか、戻って来てくださればいいのです。それまで、貴方の居場所を守らせてください」(いつか……、ですか) 必要とされているのは嬉しい。しかし、戻って来るのは何年後の話になるかわからないというのに、それでも良いのか。 問えば彼は力強く頷いた。何十年でも待ちますと言われてしまった。サキカは苦笑する。 そんなに必要とされてしまったら、辞めることなんてできないではないか。「これは、貴方が持っていてください。戻ろうと思った時に、また着てください」 返されてしまったギルドの隊員服を、サキカは撫でた。──長年着てきたこれは、愛着のあるものだった。「──宜しいのですか?」 サキカの問い掛けに、ギルドマスターは笑って頷いた。もう着ることはないと思っていたそれを再び手にすると、確かな重みに思わず笑みを溢す。「良かったのぅ」「……えぇ」 ゼウスの言葉に頷いて隊員服を“ボックス”に入れていると、眉をひそめたローザンが口を開いた。.

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